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ソロモンの偽証(宮部みゆき)感想

ソロモンの偽証読了しました。最近宮部みゆきにハマっています。

これの前に模倣犯も読んだので、また感想書きたいと思います。

ソロモンの偽証 第I部 事件

ソロモンの偽証 第I部 事件

 

 

ソロモンの偽証はハードカバーで三冊、文庫本約500Pで六冊の超大作です。

三部作になっていて、『第Ⅰ部 事件(上・下)』『第Ⅱ部 決意(上・下)』『第Ⅲ部 法廷(上・下)』に分かれています。

長編ですが、宮部みゆきさんの本はわりかし簡単な言葉で書かれていてとても読みやすく、登場人物の視点もパートごとに分かれているので間延びしません。

小難しい言葉や熟語、独特な言い回しや文体などのクセもないので、読み始めるとすっと物語に入っていけます。

 

あらすじ

簡単にあらすじを述べると、主人公の通う中学校で二年生の男子生徒が屋上から転落死します。

現場検証などの結果、自殺ということで事件は収束しかけたが、「この中学校の札付きのワル三人組に屋上から突き落とされたのを見た」という告発状が主人公や学校、担任教諭の元に届き、マスコミによって大々的に報じられる。

事実を隠蔽しようとする学校、センセーショナルな事件性を求めるマスコミ、更に告発状の差出人と思われる生徒が交通事故死するなど、混乱する学校内。

主人公は、大人も学校もマスコミも誰も本当のことを教えてくれないので、自分達で真実を見つけ出したいと思い立ち、学校内裁判を立ち上げる。

 

感想

よくある「いじめを苦にした自殺」や「いじめの事実を隠そうとする学校」というのがテーマではありません。

また、自殺した生徒の家族、主人公の家族、周りのクラスメイト達の家族の描写も細かく、パートごとに視点が変わるので、誰の立場も感情も理解しやすいです。

感想にはネタバレを含みますのでご注意ください。

結論から申し上げますと、ひどい中二病を患った少年に振り回されるお話です。

大どんでん返しなどはなく、裁判が進んでいくにつれこの自殺した生徒が相当自分に酔っていて、自分は特別だ、特別な存在でありたい、周りはバカばっかりだ、自分を理解してくれる人はどこにいるのだろうという自己愛の塊であることが分かってきます。

もう、もう、それ中二だから!中二病だから~~~~!!!恥ずかしい!!!ってなります、本当に。確かに中二なんですけど。

この少年は自分だけは周りとは違う、何か特別な人間でありたいと思っていたんです。多感な時期ですから。

でもこれだけなら笑えるのですが、私個人的な感想としては、この少年の兄が最大の被害者であり、この少年の唯一の友人も、兄と同じくらい可哀想な被害者である、ということです。

少年は幼い頃から病弱で喘息もちで、色々な病院にお世話になっていました。母親はそれ故に少年にべったりで過保護で、お兄さんには目もくれず両親の愛情は弟に一身に注がれていました。

私はどんな物語でも、こういう兄弟内での愛情格差が本当に嫌いです。辛いです。どうして親は平等に愛してやらないのか、愛されなかった子供がどれだけ辛いか、なんで愛情に差をつけるのか、本当に憤りが湧いてきます。

この両親も、特に母親が弟のことしか考えてなくて、兄のことは「あんた」と名前ですら呼ぶことがなく、良い子で我慢してきた兄が弟の正体(めっちゃ中二で自己愛の塊)に気づいて弟と喧嘩した時も、一方的に弟を庇って兄を叱る。お兄さんが本当に可哀想でした。

だからこの少年が亡くなった時、お兄さんだけは「あいつがいじめを苦に自殺なんてするわけがない」と確信していました。自分は特別な人間だから、こんなばかばかしい世の中に嫌気がさして自殺したんだと分かっていました。

だけど両親には言えないし、言ったところで信じてもらえない。更に弟が死んだ後は両親は自責の念で更に弟のことばかり考えていて、弟が死後なお両親の愛情を独り占めしていることに兄は絶望します。

あろうことかこの母親、いくら精神が参っているとはいえ、頭がおかしくなっているとはいえ、「あんたが殺したんじゃないよね?あんた、あの子のこと憎んでたじゃない」って言うんですよ……涙が出ました……

それは絶対に言ってはいけない。絶対に赦されることじゃない。自分が生んだ、弟よりも先に生んだ我が子に向かってこんな言葉をぶつけるのは、最低極まりないです。許せません。

兄はさぞ悔しかったでしょう。誰も本当の弟の姿を知らない。あいつは天使のように純粋で、聡明で、傷つきやすい、子供らしくない子供だったと思っている。特別な人間だったと思っている。

どうしてあの子が死んであんたが死ななかったのって思っている。

このお兄さんはそれでも両親を傍で支えるんですが、私はもう、こんな両親には見切りをつけた方が良いと思う。

どうせこれからの人生、結婚しても「あの子も生きていたら結婚してただろうに」とか思うだろうし、孫が生まれても「あの子が生まれた時を思い出す」とか言い出して泣くだろうし、死ぬまでずっと弟のことしか考えられずに生きていくことは目に見えています。認知症になったら弟の名前で兄を呼ぶだろうし。本当に、死ぬまで(死んでも)兄を苦しめるだけです、こんな親は。

随分とお兄さんに肩入れしてしまいますが、それくらいこの親はひどい。この本のテーマはここだけじゃないんだろうけど、私は最初から最後までこのお兄さんが可哀想で仕方なかったです。

 

もう一人の被害者である少年の友人は、少年と同じくらい聡明で大人で、そして非常に辛い過去を背負っていました。

だから少年は、心の底ではこの友人が羨ましかったのです。何せ実の父親が酒乱で母親を殺してしまい、我に返って自殺したという凄惨な過去を持っていたのですから。中二病患者としては最高に羨ましい過去です。僕もそんな複雑な家庭に生まれたかった!!苦しみたかった!!ってなるんです。

少年は普通の家庭で両親も普通、平々凡々な家族に退屈な毎日を送っていたので、実の両親亡き後、養子にとられて健気に生きる友人が羨ましくて憎らしくて仕方なかったのです。

そして、その友人を振り回し、構ってくれないなら死んでやる攻撃で友人を追いつめ、もう嫌気がさした友人に「死ぬなら死ね」と捨てられたので実際に飛び降り自殺をしたのでした。

やっかいなのが、少年は「死ぬ死ぬ詐欺」じゃなく本当に死にたいと願っていたところですね。だって中二だから。つまんないこんな世の中、生きてる意味なんてないって本当に思っていて死にたくて仕方なかったから。

だから死にたかった。いかに死ぬかを考えていた。お前は飛影か。

本当に、周りに迷惑をかけるな。死ぬなら勝手に死ねと私でも言ってたと思う。

最後、この少年の書いた遺書が出てきたのですが、この遺書も小説風に書かれていて(中二…!!)殺し屋とか出てくるんですよ。もう、辛い。顔を両手で覆いたい。

幸い(?)なのが、物語の中でも少年の同級生たちがこの遺書を読んで、「…俺、なんかすっげー恥ずかしい」「かゆい」みたいなことを言ってて、だよねだよね!?恥ずかしいよね!?中二病だからね!!!!って思いました。

 

つまり、ざっくばらんに言えば、この話はいじめに心痛めるような内容ではなく、多感なティーンエイジャーが通る道である中二病をこじらせすぎると死に至る、という内容です。

みんなが通ってきた、今でいう黒歴史な時代を振り返ることになるので、「あるある!」って笑えるところもあれば、痛すぎて見てられないところもあります。

思春期だからこそ容姿で優劣を決めたり妬んだり、大人の都合に振り回されたり、学校を敵だと決めつけたりします。

 学校内裁判を文庫二冊に渡って進行していくのですが、様々な登場人物の視点で裁判の進行を見ていけるので、全く飽きません。

悪い子がみんなの前で尋問されるところはスカッとします。鳥肌さえ立ちました。

自殺したキーパーソンは重度の中二病でしたが、生きている生徒達は本当に様々な家庭環境やそれぞれの悩みを抱えていて、葛藤しています。

読後感はほんのりとした温かさと爽やかさがありますが、私は何度も言うようにお兄さんが可哀想すぎて、この両親にムカついてムカついて仕方なかったので気持ちを落ち着けるために感想文を書くに至りました。