痛みで死ぬとしたらこの痛みだろう、と本気で思ったもうひとつは、親不知を抜歯した後の痛みでした。
私は結構痛みには強いらしく、例えば初めての授乳でうまく子供が吸えなくて乳首が下半分切れた時も(グロ注意)、後陣痛の痛みで悶絶するほど痛かったのに鎮痛剤を飲まなかった時も、肺炎で肺に水が溜まった時も、先生に「なんでもっと早く言わなかったの?これ相当痛かったでしょ?」とよく言われたのです(ちょっと誇らしげ)
でもそんな私でも、これは痛い、これは耐えられない、先生お願いしますほんとに痛いんですと何度も何度も先生に縋った痛みがあります。それが親不知の抜歯後の痛みです。
親不知は、20歳の頃に上の2本はすぽーんと抜いていました。上の歯はそれほど痛くないと聞いていたし、実際全然痛くありませんでした。
そして年を取り、下の親不知が2本ともなんか顔見せるようになってたなぁと思っていたのですが、親不知の前にある歯が虫歯になったこともあり、歯医者さんに「ここに親不知がある限り今後もこの歯が虫歯になる可能性は高いし、レントゲン撮ったら横に生えてるから百害あって一利なしな歯」みたいなことを言われましたので、じゃあ抜こうかなと思ってすぐさま口腔外科のある病院に紹介状を書いてもらいました。
上の2本が超イージーに抜けたため、私は下の2本も全然痛くないだろうと舐めまくっていたのです。
ちなみに、本来なら1本ずつ抜歯した方が負担も少なく、反対側の歯で噛めるのでいいらしいのですが、私はワーファリンを服用しているため、抜歯をするなら入院していつでも出血に対応できるようにしておいた方がいいと言われました。そして、どうせ抜くなら一気に2本抜いちゃいましょうと提案され、安易にOKしちゃいました。わーいまた医療保険から保険金下りるじゃーん☆程度にしか考えていませんでした。
これが地獄の始まりだとは夢にも思わず・・・
午前中に入院して午後から抜歯、その日は一泊して翌日退院という簡単な入院でした。
抜歯自体は、全然問題なく済みました。麻酔をかけてもらうのでほとんど寝てるし痛みもないし、抜歯後も麻酔で口の中がぼんやりしていて痛みもありません。
念のためロキソニンも出ましたが、飲まなくても大丈夫なくらいでした。(指示されたので飲みましたが)
しかし私は知らなかったのです。親不知の抜歯は、抜歯後3日目くらいからが本当の地獄だということに・・・・・
抜歯の翌日も痛みはほとんどなく、ルンルン気分で退院し家に帰りました。
縫っているので糸が口の中にあって気持ち悪いなぁという程度で、痛みに関してはそれほどありませんでした。
でも、やがて日が経つにつれてズン・・・ズン・・・ズクン・・・とうずき始める傷口。そして抜歯手術中の口内への負担による口内炎。盛り上がる歯茎。
抜いた時は全然平気だったのに、日々痛くなる傷口・・・!!!
あとほっぺも3日後から腫れ始め、記念に写真撮って友達に送ったのですが「どちらさまですか」と言われるほど顔が変わっていました。リアル宍戸錠。
あまりの痛みに、この頃から私はロキソニンを時間空けずに飲み続けることになります。
通常痛み止めは6時間は空けるよう指示が書かれていますが、6時間ももたねぇ!!!
3時間できっかり切れるんです!!しかも1回1錠、どうしても痛いときは2錠と言われていましたが、1錠じゃ全然効かない。なので1回2錠を1日9回くらい飲んでいました。当然すぐになくなるロキソニン。
でも本当に本当に痛くて、痛み出したらもう立っていられないので「うぉおおぉぉ・・・」と横に倒れるしかないのです。目も開けられない。声も出せない。子供が寄ってきても「おねがい、むり、ごめん」を無言のジェスチャーで伝えるしかできない。
子供も空気を読んで、構って攻撃はしてこず一人で黙々と遊んでくれていました。ごめんね、ごめんよ!!
と、もう健康で文化的な最低限度の生活なんてもってのほか、人間としての最低限の第一歩「起き上がる」ことすらできない状態になったので、1日おきに薬をもらいに行かないと本気で痛みで死んでしまうと思いました。
ただ、実は、抜歯をしてくれた担当医が、実はすっごい怖い先生だったんです。
どう怖いかというと、一言で言うとパワハラ全開でした。患者の私には優しい口調なんです。でも優しいのは口調だけで、目がまず全く笑ってないんです。だから恐怖しかない。
そしていざ抜歯の途中、麻酔は効いているし意識も朦朧なんですが、それでも周囲の声は聞こえるんです。そして先生の罵声ももちろん・・・。
その時は助手に新米なのか研修医なのか、とりあえずお医者さんの卵的な若い男性医師がいて、主に私の口を開けたまま固定する役をしていました。
その若造医師に色々と凄まじい暴言を吐き続ける先生。怖い、怖い、怖いよおおおお!!おしっこちびりそうでした。
周りの看護師さんも先生にものすごく気を遣ってるのがこっちにも伝わってくるくらいピリピリした環境でした。こんな先生のもとでやらなきゃいけない人達ほんと可哀想。患者の私もめっちゃ気遣う。そんな最悪な状況での抜歯だったので、先生の本性が分かっているだけに怒らせたらどうしよう、俺のやり方がヘタだっていうのかって気分を害したらどうしようと私もビクビクだったのです。
でも背に腹は代えられない。痛い痛い痛い痛い痛いこれしか言えない、これしか考えられないくらいなんです。実際、この期間の日常の記憶が一切ありません。
主人が尋常じゃなく弱っている私のために毎日ほぼ定時で帰ってきて子供をお風呂に入れてくれ、晩ご飯もインスタントかもしくは自分で作ってもらっていましたが、労りの言葉もかけられないくらいの寝たきり状態だったらしいです。
子供のご飯も当然作れず、朝アンパンマンチョコ昼ぽてち夜アルフォート(チョコやんけ)みたいな最悪な状態でした。ネグレクトはなはだしい。でも本当に何もできなかったんです。
痛み止めが効いている間に洗濯と買い出しをすませ、痛みが出てきたら途端に動きが鈍くなり思考も衰えてくるので次の痛み止めを飲むまでに結構モタつき、そして効いてくるまで倒れる・・・の繰り返しでした。
歯茎も腫れてるし痛いしで何も食べられないんです。食欲はあるのに食べられないんです。これは辛い。食欲ないなら食べなくても大丈夫だけど、食欲旺盛でお腹も空くのに何も食べられない!!
あまりに改善しないため、先生が「ドライソケットかなぁ?ちょっと痛いけどごめんねー」と川の流れのようにさらりと言って、「どらいそけっと?」と訊き返すよりも先に地獄のように疼く傷口をゴォリゴリッと掻き回されました・・・(※ドライソケットの治療方法です)天使が迎えにきたかと思いました。
☆説明しよう!ドライソケットとは、抜歯後の傷口に本来できるはずの血餅(けっぺい)というゼリー状の庇護膜が出来ず、傷口が剥き出しになったままの状態のこと。当然ものすごく痛い。激痛どころじゃないくらい痛い。なので、この傷口をもっかい傷つけて血を出して潤わせるという地獄の治療法しかないのである。
あと、こんなに痛い辛いと言っているのに先生10錠しか薬出してくれなくてほんと辛かったです。10錠なんて1日でなくなるんだってば!!!!!
でも先生が怖いのでもっと出してとも言えず、また3時間おきに飲んでいるとも言いにくく、最終的には薬局にロキソニンを買いに行きました。もう、もうこれが原因で死んでしまってもしょうがない・・・だって飲まなかったら痛みで死んじゃうんだもん・・・と、これまた正常な判断もできずただただ朦朧とした意識でロキソニンを飲み続けるのでした。
11月9日に抜歯をして、痛みが完全になくなったのは新年明けてからでした。
ただドライソケットの治療後はやや順調に疼きも減っていき、痛み止めも6時間空けられるようになり、薬局で買ったロキソニンは結局飲むことはありませんでした。(紹介状を書いてもらった歯医者さんに結果報告に行った際にカロナールを10日分出してもらったのもあります)
昔の人ってさぁ、ロキソニンがなかった時代の人って痛みで死んでいった人絶対いるよね、としみじみ現代人で良かったと思いました。
一年経った今でも、痛みはないですが歯茎が盛り上がっている違和感はあります。
でもこういう違和感は何年も続く場合もあれば、一生続く可能性もありますと手術前の説明書にも書いていてそれに同意しているので、まぁこの違和感はずっとつき合っていくものなのかもと覚悟はしています。
だけど親不知抜いた後ってほんと痛いです。血流のドクドクという動きにも痛むんです。痛みを我慢して噛み締めることもできない(噛み締めるその場所がまさに一番痛いところだから)。出産の方がずっと簡単、全然痛くないと思ったのもこの時でした。
なので、親不知の抜歯を舐めている人は考えを改めてください。下の親不知2本一気に抜歯コースは三途の川を渡ることになります。